◆たくさんありすぎるお経
「お経」って、何でこんなにいっぱいあるんだろうか?
キリスト教は聖書は一つで分かりやすいが、仏教は「お経」がたくさんありすぎて
何がなんだか分かりません!
一口に「お経」といっても、実に様々な内容を持つお経が存在しますね。
ここでは、そんな「お経」を考えてみたいと思います。
とりあえず、身近なお経である『般若心経』を例に考えてみました。
◆お釈迦さまの教えと、弟子たち
仏教では、「良いことをして悪いことをせず、清らかな生活をする」という原則がら外れなければ
様々な解釈が許されました。
やがて、釈迦の弟子たちは、それぞれの興味にしたがって仲間を集め、グループを作っていきます。
例えば、阿弥陀如来や観音様のような、「仏の救い」を求めるグループ。
仏さまの「智慧」をとことんまで追求するグループ。
自分はどうでもいいから、他人を助けたいと願う「慈善」グループ。
いったい心とは何だろうか、と「心の奥底を覗き込む」グループ。
このような興味にしたがってグループが徐々に出来上がり、
おおもとの拠り所である釈迦の教えに、さらに拡大・付け足し・強調・付加・編入・を繰り返していくうちに
それぞれのグループの特徴ある独自の経典が出来上がったというわけです。
(言うまでもなく、どのお経も根っこはお釈迦様)
◆般若経をみてみましょう
これらたくさんあるお経の中、「般若経」を見てみましょう。
「般若経」は、かの有名な『般若心経』が含まれる「経典群」だと思ってください。
「般若経」には、多くの種類がありますが、どれも「空」を色々な角度から説明しているのです。
これら「般若経」は、長い時間をかけ、徐々に中国に伝わりましたが、一番まとまった形で伝えたのが、
西遊記のモデルともなった玄奘三蔵(げんじょうさんぞう)なのです。
玄奘三蔵の伝えた「般若経典群」を「大般若経600巻」と呼んでいます。
この「空」を説く般若経典群の中で、一番有名で、一番小さなお経が『般若心経』なのです。
◆般若心経は「大般若600巻」のエッセンス!
般若心経』のプロフィールをごくごく簡単に言うと、
大般若経600巻という、とてつもなく大きな経典の要約と考えると一番理解しやすいと思います。
大般若経600巻を、ギューっと絞ったとき、ぽたりと落ちたエッセンスが般若心経なのです。
だから、般若心経を読んだだけでは何が書いてあるかさっぱり分かりません。
一つ一つの言葉に、無限と思われるほどの深い意味を含みます。
何でこんなにいっぱいお経があるの?
それぞれのグループが、大切に感じているところを、さらに強調して特長ある「経典」ができる。
「お経」の成立を、『般若心経』を例に挙げ、追ってみました。
お経の成立には分からないことがたくさんありすぎます。
いったい誰が経典を作ったのかさえ、まったく分かっていません。
すべて、現存する経典より推理するしか方法がないようです。
北方仏教の旅
南方仏教の旅
およそ2500年前
お釈迦様の布教地域
大雑把な地図
出っ張ったところが宗派色!
般若経の出っ張りは、多くの宗派で共有される
大仏!
南無妙法蓮華経!
南無阿弥陀仏!
多くの宗派共通!
この図は、
「般若経A・B・C・D・・・」が、「空」をあーでもない、こーでもないと、
色々な角度から説明していることを示そうとしたものです。
そして、多くの「般若経」が一番言いたかったこと、
それが蛇口からぽたりと落ちたわずかな滴(しずく)が
「般若心経」なのです。
◆「般若心経」は空のひとしずく
◆「お経」言葉の意味
お経は、八万四千の法門といわれるほど、非常に多くの種類があります。
この「お経」という言葉は漢字、つまり中国語ですね。
仏教はインドが故郷なので、お経に対するインドの本名が当然あるわけです。
◆インド語→中国語
インドの本名である「スートラ」を中国語で「経」という字に訳しました。
「経」は、仏教が伝わる前から、当然中国にあった文字です。
「経」は、「一定して変わらない」「普遍の道理を説いた書物」「物事の筋道」「織物の縦糸」を意味している漢字です。
経線(けいせん)も地球の縦糸ですね。
「経」→◆月日がたつ
◆一定して変わらない
◆普遍の道理を説いた書物
◆物事の筋道
◆「お経」の本名 インド語
「お経」とは、インドの言葉で「スートラ」という本名があります。
この「スートラ」と言う言葉はは、縦糸(たていと)を意味しています。
縦糸は織物の基本であり、他の色と交わらないところから、お釈迦さまの教えをまとめたものを「スートラ(たていと)と呼び習わしました。
◆お経の三つの姿
「お経」と一口に言っても、実に様々な内容を持っています。このたくさんのお経を、内容から3種類に分けることがあります。
3種類とは、「経(きょう)」「律(りつ)」「論(ろん)」の三つです。それぞれ、経蔵、律蔵、論蔵という言い方をしますので、あわせて三蔵といいます。
「経」とは、いわゆる「法華経」や「般若心経」のような、お釈迦さまの教えを記したもの。
「律」とは、出家した僧侶などの生活規範、つまり戒律を細かく記したもの。
「論」とは、「経」の解説書。お釈迦さまの伝えたことを、色々と解説したものも重要視されます。
◆三蔵法師って、実はたくさんいるんです
これら3種類に精通したお坊さんのことを、「三蔵法師」って言うんです。一番有名なのは、孫悟空たちをお供に連れた三蔵法師ですね。
この「三蔵法師」には実際のモデルがいます。玄奘三蔵といって、ありがたいお経を求め、約20年にもわたってインドを旅した中国のお坊さんです。
先に記した、空の決定版「大般若経600巻」を中国に伝えたのも、この玄奘三蔵です。
その他、鳩摩羅什(くまらじゅう)三蔵とか、義浄(ぎじょう)三蔵、善無畏(ぜんむい)三蔵、不空(ふくう)三蔵などなど、何人かの三蔵法師(高僧)がいます。
◆一番有名な三蔵法師 玄奘(げんじょう)三蔵
本当は写真を載せたいところですが、著作権とか心配なので雰囲気だけでも・・・。
学校の歴史の副読本などでよく見かけますね。
このような姿で、天竺(インド)を旅したのでしょうか。
かちかち山のように背中に背負っているのが、インドより持ち帰ったお経ですね。実際は、これよりはるかにたくさんのお経を持ち帰っているます。
当時の中国(唐)では、国外に出ることは禁じられていました。つまり三蔵法師(玄奘三蔵)は、国の法律を破ってまで、インドにお経を求めたのです。
しかし、約20年後の帰国の際はまったく正反対で、国を挙げての歓迎だったそうです。
三蔵法師(玄奘)は、これら持ち帰ったお経を、インド語から中国語に、亡くなるまで訳し続けました。
これらの偉業が、のちに「西遊記」として物語となりました。
三蔵法師といえば、個人的には夏目雅子ですね。