鉄のさびが鉄から出て鉄をむしばむように、悪は人から出て人をむしばむ。
経があってもろくに読まなければ経の垢、
家があっても破れてつくろわないのは家の垢、身があっても怠るのは身の垢で
ある。
行いの正しくないのは人の垢、ものおしみは施しの垢、悪はこの世と後の世の
垢である。
しかし、これらの垢よりも激しい垢は無明(むみょう・無知)の垢である。
この垢を落とさなければ、人は清らかになることができない。
恥じる心なく、烏のようにあつかましく、人を傷つけて省みるところのない人の
生活は、なしやすい。
謙遜の心があり、敬いを知り、執着をはなれ、清らかに行い、智慧明らかな
人の生活は、なし難い。
他人の過ちは見やすく、己の過ちは見難い。他人の罪は風のように四方に
吹き散らすが、己の罪は、さいころを隠すように隠したがる。
空には鳥や煙や嵐の跡なく、よこしまな教えには悟りはなく、すべてのもの
は永遠ということがない。そして悟りの人には動揺がない。
【仏教聖典 199n〜200n】