人間の欲にははてしがない。それはちょうど塩水を飲むものが、いっこうに渇きがとまらないのに似ている。彼はいつまでたっても満足することがなく、渇きはますます強くなるばかりである。

 人はその欲を満足させようとするけれども、不満がつのっていらだつだけである。

 人は欲を決して満足させることができいない。そこには求めて得られない苦しみがあり、満足できない時には、気も狂うばかりとなる。

 人は欲のために争い、欲のために戦う。王と王、臣と臣、親と子、姉と妹、友人同士、互いにこの欲のために狂わされて相争い、互いに殺しあう。

 また人は、欲のために身をもちくずし、盗み、詐欺し、姦淫する。時には捕らえられて、さまざまな刑を受け、苦しみ悩む。

 また、欲にために、(しん)()()の罪を重ね、この世で苦しみを受けるとともに、死んで後の世には、暗黒の世界に入って、さまざまな苦しみを受ける。

【仏教聖典 199n〜200n】




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